【エンジニア向け】SESと客先常駐の違いとは?契約形態から働き方まで徹底解説
SESと客先常駐の違いが曖昧なエンジニアの方へ。この記事では、契約形態という根本的な違いから、派遣や受託との比較、メリット・デメリット、優良企業の見分け方まで徹底解説。あなたのキャリア選択の疑問を解消します。
キャリアパス診断してみる「SESと客先常駐って、結局何が違うの?」
「どちらもお客様の会社で働くイメージだけど、同じ意味じゃないの?」
IT業界でキャリアを考え始めたエンジニアにとって、「SES」と「客先常駐」は頻繁に耳にする言葉ですが、その違いを正確に説明できる人は意外と少ないかもしれません。
Web上には「SESはやめとけ」といったネガティブな情報もあり、不安に感じている方もいるでしょう。
この記事では、そんなあなたの疑問や不安を解消するために、SESと客先常駐の根本的な違いから、それぞれのメリット・デメリット、そして後悔しないための企業の選び方まで、分かりやすく徹底解説します。
この記事を読み終える頃には、2つの言葉の違いがスッキリと理解でき、自分に合った働き方を見つけるための第一歩を踏み出せるはずです。
結論:SESと客先常駐は比較する土俵が違う
まず結論からお伝えすると、SESと客先常駐は全く別の概念です。
- SES(システムエンジニアリングサービス): 「契約形態」の一種
- 客先常駐: 「働き方(勤務場所)」の一種
リンゴ(SES)と果物(客先常駐)を比べるようなもので、そもそも比較の土俵が異なります。
SES契約を結んだ結果、客先常駐という働き方になるケースが非常に多いため混同されがちですが、「SES ≠ 客先常駐」です。ここが最も重要なポイントなので、まずはこの違いをしっかり押さえておきましょう。
用語 | 分類 | 意味 | 例 |
|---|---|---|---|
SES | 契約形態 | 成果物ではなく、エンジニアの労働力や技術力を提供する契約 | 準委任契約 |
客先常駐 | 働き方 | 自社ではなく、クライアント企業のオフィスで働く勤務形態 | クライアントのオフィスに出社する |
それでは、それぞれの言葉の意味をさらに詳しく見ていきましょう。
SESとは?契約形態から理解する
SES(システムエンジニアリングサービス)とは、クライアントに対してエンジニアの技術力を提供することを目的とした「準委任契約」を指します。
ポイントは以下の2つです。
- 成果物の完成責任を負わない: SES契約は、システムの完成や納品を約束するものではありません。エンジニアが契約期間中に業務を遂行すること(労働力を提供すること)に対して報酬が支払われます。
- 指揮命令権は自社にある: エンジニアへの業務指示や勤怠管理を行う権利(指揮命令権)は、クライアントではなく、エンジニアが所属する自社(SES企業)にあります。クライアントは、SESエンジニアに対して直接的な業務命令を出すことはできません。
この「指揮命令権の所在」が、後述する派遣との大きな違いになります。
SESと他の契約形態(派遣・受託)との違い
SESへの理解を深めるために、よく比較される「派遣」や「受託開発」との違いも見ていきましょう。特に指揮命令権と成果物責任の観点から見ると、違いが明確になります。
契約形態 | 指揮命令権の所在 | 成果物責任 | 働き方の例 |
|---|---|---|---|
SES(準委任契約) | 自社(SES企業) | なし | 客先常駐 |
派遣(派遣契約) | 派遣先(クライアント) | なし | 客先常駐 |
受託開発(請負契約) | 自社(開発会社) | あり | 自社開発 |
SESと派遣の違い
SESと派遣は、どちらもクライアントのオフィスで働く「客先常駐」になることが多い点で似ていますが、指揮命令権の所在が決定的に異なります。
- SES: 指揮命令権は自社。クライアントは直接指示を出せない。
- 派遣: 指揮命令権は派遣先(クライアント)。クライアントが直接指示を出せる。
実態として、SESの現場でもクライアントから直接指示を受けているように見えるケース(偽装請負)も問題視されていますが、契約上の建付けは明確に異なります。
SESと受託開発の違い
SESと受託開発は、成果物の完成責任の有無が大きな違いです。
- SES: 成果物の完成責任はない。エンジニアの労働に対して対価が支払われる。
- 受託開発: 成果物の完成責任がある。システムやソフトウェアを完成・納品することで対価が支払われる。
このため、受託開発は自社のオフィスで開発を進める「自社開発(持ち帰り開発)」が基本となります。
客先常駐で働くメリット・デメリット
次に、「働き方」としての客先常駐に焦点を当て、そのメリットとデメリットを見ていきましょう。これはSESだけでなく、派遣エンジニアにも当てはまる内容です。
メリット
- 様々な環境や技術に触れられる: プロジェクトごとに職場や使用技術が変わるため、短期間で多様な経験を積むことができます。大手企業の開発現場や最新技術を扱うプロジェクトに参加できるチャンスもあります。
- 人脈が広がる: 様々な企業のエンジニアと一緒に働くため、社外の人脈を広げやすい環境です。そこで得た繋がりが、将来のキャリアに活きることもあります。
- 未経験からでも挑戦しやすい: 自社開発企業に比べて、未経験者向けの案件が多い傾向にあります。まずは実務経験を積みたいという方にとっては、業界への入り口となり得ます。
デメリット
- 職場環境が頻繁に変わる: プロジェクトが終わるたびに人間関係や職場のルールがリセットされるため、環境の変化にストレスを感じる人には負担になる可能性があります。
- 帰属意識を持ちにくい: 長期間自社に戻らないケースも多く、「自分はどこの会社の社員なのだろう」と孤独感や疎外感を抱くことがあります。
- 自社の評価が見えにくい: 常に客先で仕事をしているため、自社の上司があなたの働きぶりを直接見ることができず、正当な評価を受けにくい場合があります。
なぜ「SESはやめとけ」と言われるのか?3つの理由
「SESはやめとけ」という意見を耳にすることがありますが、それにはいくつかの構造的な理由があります。SESという契約形態自体が悪なのではなく、一部の企業や環境に問題があるケースが多いことを理解しておきましょう。
理由1: 指揮命令権がないことによる弊害
SES契約では、クライアントはエンジニアに直接指示を出せません。そのため、何かを依頼する際は自社の営業担当者などを介する必要があります。この伝言ゲームのような状況が、コミュニケーションの齟齬や業務の非効率を生むことがあります。また、現場で正当な扱いを受けにくいと感じる一因にもなっています。
理由2: 多重下請け構造の問題
IT業界には、元請け企業から二次請け、三次請け…と仕事が流れていく「多重下請け構造(商流)」が存在します。商流が深くなるほど中間マージンが抜かれ、末端で働くエンジニアの給与は低くなる傾向にあります。自分がどの階層で働いているのか不透明なまま、低賃金で働かされるケースが「やめとけ」と言われる大きな理由です。
理由3: 案件や環境を選びにくい
SES企業によっては、本人のスキルやキャリアプランを無視して、とにかく空いている案件にエンジニアを割り当てようとすることがあります。その結果、スキルアップに繋がらない単純作業ばかりの現場や、劣悪な労働環境のプロジェクトに長期間関わらざるを得なくなる可能性があります。
後悔しないために!優良SES企業を見分ける5つのポイント
すべてのSES企業が悪いわけではありません。エンジニアのキャリアを真剣に考え、成長を支援してくれる優良企業も数多く存在します。入社後に後悔しないために、以下のポイントをチェックしましょう。
- 商流が浅い案件を多く持っているか: エンドユーザーや元請け企業と直接取引している(プライム案件が多い)企業は、エンジニアの単価も高く、利益を社員に還元しやすい傾向にあります。
- 教育・研修制度が充実しているか: 資格取得支援制度や社内勉強会など、エンジニアのスキルアップを積極的にサポートする体制が整っているか確認しましょう。
- キャリアパスの相談ができるか: 営業担当者や上司が定期的に面談を行い、エンジニア一人ひとりの希望やキャリアプランに寄り添ってくれる企業は信頼できます。
- 給与や評価制度が明確か: 案件の単価と給与の連動性(単価還元率)や、評価基準がクリアに開示されているかどうかも重要な判断基準です。
- エンジニアの稼働状況を把握しているか: 自社のエンジニアがどのような環境で、どのような業務をしているかを営業担当者がきちんと把握し、フォローしている企業を選びましょう。
よくある質問(Q&A)
Q. 未経験からでもSESエンジニアになれますか?
A. はい、なれます。SES業界は未経験者向けの求人が比較的多く、研修制度を整えている企業も多いため、IT業界への入り口として選ぶ人は少なくありません。ただし、入社後のキャリアを考え、スキルアップ支援に力を入れている企業を選ぶことが重要です。
Q. 客先常駐でスキルアップするにはどうすればいいですか?
A. 積極的にコミュニケーションを取り、与えられた業務範囲以上のことにも興味を持つ姿勢が大切です。また、常駐先の社員から技術や知識を吸収しようと努めることも有効です。自社の営業担当者に定期的にキャリアプランを伝え、希望するスキルが身につく案件にアサインしてもらえるよう交渉することも重要です。
Q. 自社開発企業に転職したい場合、SESの経験は不利になりますか?
A. 一概に不利になるとは言えません。SESで多様なプロジェクトを経験し、幅広い技術や業務知識を身につけていれば、それは大きな強みになります。重要なのは「SESで何を経験し、どんなスキルを身につけたか」です。目標を持って案件に取り組み、成果を具体的にアピールできれば、有利に働くことも十分にあります。
まとめ:正しい知識で自分に合ったキャリアを選ぼう
今回は、「SES」と「客先常駐」の違いについて解説しました。
- SES: 成果物ではなく技術力を提供する「契約形態」(準委任契約)
- 客先常駐: クライアントのオフィスで働く「働き方」
この2つは全く別の概念であり、「SES契約の結果、客先常駐という働き方になることが多い」と整理できたかと思います。
「SESはやめとけ」という言葉に惑わされず、その背景にある構造的な問題を理解し、優良な企業を見極める目を持つことが、あなたのキャリアにとって非常に重要です。
今回得た知識をもとに、それぞれのメリット・デメリットを正しく理解し、あなたが理想とするエンジニア像に近づけるようなキャリアパスを選択してください。
職務経歴書の添削やキャリア相談はプロに任せるのも一つの手
「一通り調べてみたけど、自分に合う企業がどんなところか分からない…」
「自分のスキルで、どんな企業に応募できるのか客観的な意見が欲しい…」
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応エン