SESのリモート案件が減ったのは本当か?エンジニアが市場で勝ち残るための戦略
「SESのリモート案件が減った」と感じるエンジニアへ。その背景にある市場の現状を分析し、2024年以降もフルリモート・高単価案件を獲得し続けるための具体的なスキルアップ戦略と案件探しのコツを解説します。
「最近、SESのリモート案件が明らかに減った気がする」
「フルリモートを希望すると、一気に紹介数が減る」
そう感じているなら、その感覚はかなり妥当です。
ただし、正確にいうとリモートワークそのものが消えたわけではありません。いま起きているのは、フルリモート案件が減り、週1〜数回出社のハイブリッド型へ寄っていること、そしてリモートを認める企業側の対象者が絞られていることです。IT人材市場では「フルリモート」求人が2023年6月のピークから29.5%減少した一方、原則出社の求人は約3.4倍に増加しました。他方で、国土交通省の調査では雇用型テレワーカーの割合は全国24.6%、首都圏では37.5%と、コロナ前より高い水準を維持しています。つまり、消えたのではなく、条件が厳しくなったと見るほうが実態に近いです。
参考
【7月29日公開予定】IT人材の転職市場動向
令和6年度 テレワーク人口実態調査 -調査結果(概要) -
令和6年度 テレワーク人口実態調査 -調査結果-
SESに限定した公的な案件統計は見つけにくいものの、IT人材市場全体ではこの傾向がはっきり出ています。だから、いま必要なのは「リモート案件が減った」と嘆くことではなく、どうすれば今の市場で選ばれる側に回れるかを整理することです。この記事では、その視点で現実的な戦略をまとめます。
SESのリモート案件が減ったのは本当か?
結論からいうと、「SESのリモート案件が減った」は半分正しく、半分は言い方の問題です。
正しいのは、フルリモート案件が以前より取りにくくなっていることです。レバテックの2025年データでは、IT人材市場のフルリモート求人はピーク比で29.5%減少しています。パーソル総合研究所の調査でも、2025年7月のテレワーク実施率は22.5%で大きく崩れていない一方、週1日以下の低頻度テレワーカーは49.4%まで増え、35.8%が「前年より頻度が減った」と回答しています。つまり、「リモートあり」は残っていても、「毎日フルリモート」は狭くなっています。
特にSESで「減った」と感じやすいのは、自社の判断だけで働き方が決まらず、最終的には客先や案件の運用方針に左右されるからです。企業側でリモート対象者を絞る流れが強まると、その影響はSESの提案段階や参画条件に出やすくなります。Gartnerの2025年調査でも、日本企業はリモートワークを続けながらも、対象者を絞る傾向が明らかになっています。
なぜ今、SESのリモート案件は取りにくくなったのか
出社回帰ではなく「リモート対象者の選別」が進んでいる
「もうリモートは終わり」とまでは言えません。実際、パーソル総合研究所では、業種別のテレワーク実施率は情報通信業が56.3%で最上位です。IT系技術職のテレワーク頻度も週平均1.86回と高く、エンジニア職が他職種より柔軟な働き方を維持していることは事実です。
ただ、企業は以前より「誰でもフルリモート可」とは考えていません。Gartnerによると、2025年は「リモートワークをまったく実施していない/予定もない」企業割合が増えた一方で、「全社員の50〜80%がリモート」の企業割合は減少しました。これは、制度を消したというより、対象や範囲を絞ったと読むほうが自然です。
マネジメント・育成・評価の難しさでハイブリッドに寄りやすい
パーソル総合研究所の調査では、テレワークが定着する一方で、「部下の様子が分からない」などのマネジメント不安が残っていることが示されています。また、企業規模10,000人以上ではテレワーク実施率が前年比で3.6ポイント減り、「原則出社」の指示も微増しました。
SESでこの影響が大きいのは、客先が求めるのが単なる作業者ではなく、進捗が見え、相談しやすく、立ち上がりが早い人だからです。受託開発や設計に近い現場でも、要件が固まっていない段階や、関係者が多い案件ほど、対面での調整を残したがる傾向があります。ここで問われるのは、リモート経験の有無よりも、離れていても期待値を揃えられるかです。
セキュリティや顧客対応の都合で出社要件が残りやすい
もうひとつ大きいのが、セキュリティと顧客対応です。総務省の通信利用動向調査では、テレワークを導入しない理由として、業務進行の難しさ、社員評価、社内コミュニケーション、情報漏えい、顧客等外部対応が並びます。またIPAの「情報セキュリティ10大脅威 2025」でも、リモートワーク等の環境や仕組みを狙った攻撃が継続して挙がっています。
このため、顧客情報や機微なデータを扱う案件、承認ルートが複雑な案件、対面での調整が多い案件は、どうしても出社要件が残りやすくなります。SESはその影響を受けやすい働き方なので、「リモート案件が減った」というより「リモートにしづらい案件が増えた」と考えると整理しやすいです。
リモート案件減少局面で不利になりやすいエンジニアの特徴
ここはかなり重要です。今の市場で厳しいのは、スキル不足の人だけではありません。案件選びや職務経歴書の見せ方がズレている人も不利になります。
まず不利なのは、働き方だけで案件を選んでいる人です。フルリモートを最優先にしすぎると、担当工程が浅い案件や、運用監視に近い案件ばかりを渡り歩いてしまうことがあります。すると、一時的には楽でも、数年後に「リモート条件が外れた瞬間に戦えない」状態になりやすいです。
次に厳しいのは、補助的な作業が中心で、成果を言語化できない人です。
たとえば「テストを担当」「保守を担当」「開発を担当」と書いても、それだけでは市場で強みになりません。今見られているのは、次のような情報です。
- どの課題に対して
- 何を改善し
- どこまで自走し
- どんな成果を出したか
ここが見えないと、フルリモート案件で求められる「任せやすさ」が伝わりません。
よくある誤解は、「リモート案件が減ったなら、まず技術力だけ上げればいい」というものです。もちろん技術力は大事ですが、それだけでは足りません。今の市場で評価されやすいのは、技術力に加えて、非同期でも仕事を前に進められること、ドキュメントや報連相で不安を減らせることです。企業側にマネジメント不安が残っている以上、ここを無視すると取りこぼします。
市場で勝ち残るための戦略
リモート可否より「積み上がる経験」で案件を選ぶ
ここから先は、働き方の希望を捨てる話ではありません。働き方を守るために、先に市場価値を上げるという順番の話です。
IT人材市場そのものは弱っていません。レバテックの2025年6月時点では、IT人材の転職求人倍率は11.2倍で高水準が続いており、同時期の全業種の有効求人倍率1.24倍よりかなり高い状態です。さらにIPAの資料では、日本企業の85.1%がDXを推進する人材不足を感じていると示されています。つまり、仕事がなくなったのではなく、求められる人材像が厳しくなったということです。
だから案件を選ぶときは、「フルリモートか」だけでなく、「この案件で何が積み上がるか」を先に見たほうがいいです。
具体的には、次の経験は評価につながりやすいです。
- 基本設計・詳細設計の経験
- 要件整理や顧客折衝の経験
- クラウド環境での構築・運用改善
- セキュリティや権限設計に関わった経験
- 開発フロー改善、レビュー、品質改善の経験
- チーム内での情報整理やドキュメント整備
逆に、評価されにくいのは、切り出された単純作業だけを長く続けている状態です。今はAI・生成AI関連求人の伸びも目立っており、単純実装の量だけでは差別化しづらくなっています。
設計・改善・クラウド・セキュリティ寄りの経験を増やす
今の市場で強いのは、「たくさんコードを書いた人」より、仕組み全体を理解し、改善できる人です。
特にリモート案件では、細かく指示を出さなくても進められることが求められるので、設計・改善・運用設計まで見られる人が強いです。
現場目線で見ると、フルリモートでも任せやすいのは、次のタイプです。
- 詰まったときに早く相談できる
- 相談時に状況整理までできる
- 調査結果を文章で残せる
- 仕様のあいまいさを放置しない
- 依頼された作業の周辺まで見られる
これは派手なスキルではありませんが、案件参画後の安心感に直結します。特にSESでは、営業が提案しやすい人材になるかどうかにも効きます。
リモートで成果を出せる人として職務経歴書を書き換える
ここは見落とされがちですが、かなり差が出ます。
企業が見たいのは「リモート勤務がしたい人」ではなく、リモートでも成果が落ちない人です。
職務経歴書では、次のように書き換えると伝わりやすくなります。
悪い例
Javaで開発に従事。テスト、改修、運用保守を担当。
良い例
Java/Spring環境の改修・保守を担当。障害対応時は原因切り分けから修正方針整理まで対応し、調査内容をドキュメント化してチームに共有。定例外でもSlackで進捗・懸念点を先回りして共有し、手戻りの抑制に貢献。
ポイントは、技術名だけで終わらず、どう動ける人かまで伝えることです。
これはリモート案件だけでなく、次の転職でも効きます。
フルリモート一本ではなく、条件の優先順位を整理する
フルリモートにこだわるのが悪いわけではありません。
ただ、フルリモートだけを絶対条件にすると、選べる案件がかなり狭くなるのは事実です。フルリモート求人は減少し、テレワーク実施頻度も全体として下がっています。
なので、一度条件を3段階で整理しておくのがおすすめです。
- 絶対に譲れない条件
例:転居なし、月の出社上限、年収下限 - できれば欲しい条件
例:週1以下の出社、残業少なめ、モダン環境 - 長期的には優先したい条件
例:設計経験が積める、自社開発に寄せられる、SES脱出につながる
この整理がないと、目先の「リモート可」に飛びついて、キャリアが積み上がらない案件を選びやすくなります。これが、減少局面での失敗しやすいパターンです。
SES案件・求人票を見るときのチェックポイント
「リモート可」より先に見るべき項目
求人票や案件票で本当に見るべきなのは、「フルリモート」の文字そのものではありません。
次の項目を確認してください。
- リモート開始のタイミング
参画初日からか、立ち上がり後か - 出社頻度の定義
原則週1なのか、月数回なのか、必要時出社なのか - 変更可能性
「今後方針変更の可能性あり」があるか - 担当工程
テスト中心か、設計以降まで入れるか - 参画体制
一人参画か、チーム参画か - 商流
元請けに近いか、情報がどこまで正確か
特に重要なのは、出社頻度より担当工程です。
出社が少なくても、やることが単調なら市場価値は上がりにくいです。逆に、週1出社でも設計や改善経験が積めるなら、次に効く案件になることがあります。
要注意な求人の書き方
次の表現は注意して見てください。
- 「フルリモート可」だが、備考に「関東圏在住者歓迎」
- 「リモート併用」だが、出社頻度が書いていない
- 「未経験でも可」だが、担当工程が曖昧
- 「コミュニケーション重視」だけが強く書かれている
- 「長期案件・安定」とだけあり、何が身につくか不明
こうした案件は、入ってみると
実質常駐寄り
簡単な作業の繰り返し
出社頻度が後から増える
といったズレが起きやすいです。
面談で必ず確認したい質問
案件面談やエージェント面談では、最低限これだけは聞いておくと失敗しにくいです。
- 現在のチームの出社実態はどうか
- 今後、出社方針が変わる可能性はあるか
- 参画後3か月で期待される役割は何か
- この案件で身につく工程・経験は何か
- 評価されるのは作業量か、改善提案か
- リモート下での報告・連携のやり方はどうなっているか
ここを聞けば、働き方だけでなく、その案件が自分の将来に効くかまで見えやすくなります。
いまSESで消耗しているなら、考えるべきこと
リモート案件に残ることと、キャリアが良くなることは別
ここは大事です。
リモート案件を取り続けることと、キャリアが良くなることは同じではありません。
もし今の不満が
「客先常駐そのものがつらい」
「商流が深くて評価されにくい」
「担当工程が浅く、スキルが積み上がらない」
なら、答えは「もっと条件のいいSES案件を探す」だけではないことがあります。
リモート案件を探すことは大事です。
でも、それが今のしんどさの根本解決なのかは別です。
次のキャリアに進んだほうがいいサイン
次のどれかが強いなら、案件探しより転職の設計を優先したほうがいいです。
- ここ2〜3年で担当工程がほとんど変わっていない
- 職務経歴書に「成果」が書けない
- 客先が変わるたびに仕事がリセットされる
- リモート条件が外れた瞬間、残したい理由がない
- 今の会社にいても設計・改善・上流に広がらない
この状態で「フルリモート案件さえ取れれば何とかなる」と考えると、問題を先送りしやすいです。
むしろ今は、SES経験をどう市場価値として言い換えるかを整理して、次の選択肢を増やしたほうが安全です。
まとめ|今は「リモートできる人」より「離れていても成果を出せる人」が選ばれる
SESのリモート案件が減った、という体感はかなり現実に近いです。
ただし、正確にはリモートが消えたのではなく、フルリモートが減り、対象者の選別が進んだという理解がしっくりきます。テレワーク自体は今も残っていますが、企業はマネジメント、育成、評価、セキュリティの観点から、より任せやすい人に絞る動きを強めています。
だから、これから勝ち残るために必要なのは、単に「リモート希望」と言うことではありません。
積み上がる経験を選ぶこと
離れていても成果を出せる証拠を作ること
必要ならSESの外も含めて次のキャリアを考えること
この3つです。
いま紹介数が減っていても、あなたの価値まで下がったとは限りません。
市場が見ているポイントが変わっただけです。そこに合わせて整理できれば、次の選択肢はまだ広げられます。