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SESの精算幅とは?給料の仕組みをエンジニア向けに徹底解説【計算方法・注意点も紹介】

SESの精算幅(140h-180hなど)が給料にどう影響するか知っていますか?本記事では、上限/下限を超えた場合の計算方法から、契約時の注意点、メリット・デメリットまで、エンジニアが知るべき全てを分かりやすく解説します。

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給与明細に書かれている『時間単価調整』って何だろう?」「契約書の『精算幅: 140h-180h』ってどういう意味?」

SES(システムエンジニアリングサービス)で働くエンジニアの多くが、一度はこのような疑問を抱いたことがあるのではないでしょうか。

SESにおける「精算幅」は、あなたの毎月の給料を左右する非常に重要な仕組みです。しかし、その内容がきちんと説明される機会は少なく、よく理解しないまま働いている方も少なくありません。

この記事を読めば、以下のことが明確になります。

  • SESの精算幅の基本的な仕組み
  • 稼働時間によって給料がどう変動するかの具体的な計算方法
  • 不利な契約を結ばないために確認すべきポイント

精算幅を正しく理解することは、自身の働き方を正当に評価してもらい、キャリアを守るための第一歩です。ぜひ最後まで読んで、給与への不安を解消しましょう。

そもそもSESの「精算幅」とは?

SESにおける精算幅とは、「この範囲内の稼働時間であれば、月々の契約金額(単価)は固定ですよ」と定めた基準時間のことです。一般的に「下限時間~上限時間」で設定され、「140h~180h」「150h~190h」といった表記がされます。

この範囲を基準として、稼働時間が上限を超えれば追加で報酬が支払われ(超過精算)、下限を下回れば報酬が減額される(不足精算)仕組みになっています。

精算幅の基本的な仕組み(中央値・下限・上限)

精算幅は、多くの場合「中央値±20時間」のように設定されます。例えば「140h~180h」の場合、中央値は160hです。これは、1ヶ月の平均的な営業日数である20日に、1日8時間労働を掛けて「160時間」を基準としているケースが多いためです。

  • 下限(例:140h): これより労働時間が短いと、給料から引かれます(控除)。
  • 中央値(例:160h): この時間を基準に単価が設定されています。
  • 上限(例:180h): これより労働時間が長いと、給料に上乗せされます(残業代)。

この仕組みにより、月々の稼働時間の変動に対応し、エンジニアとクライアント企業双方にとって公平な精算が行われます。

なぜSES契約に精算幅が存在するのか?

では、なぜこのような少し複雑な仕組みが存在するのでしょうか。それは、クライアント企業とSES企業の双方にメリットがあるからです。

  • クライアント企業のメリット: 月によって業務量に波があっても、一定の範囲内であればエンジニアへの支払額を固定化できるため、予算管理がしやすくなります。
  • SES企業のメリット: 祝日が多くて稼働時間が少なくなる月でも、下限時間が設定されていれば、売上の大幅な減少を防ぐことができます。

このように、精算幅は月々の稼働時間のブレを吸収し、安定した取引を行うためのバッファーとして機能しているのです。

【具体例で解説】精算幅による給料の計算方法

ここからは、具体的な数字を使って、精算幅があなたの給料にどう影響するのかをシミュレーションしてみましょう。少し複雑に感じるかもしれませんが、一度理解すれば簡単です。

前提条件

まずは計算の元となる前提条件を以下のように設定します。

  • あなたの単価: 80万円/月
  • 所属企業の還元率: 70%
  • 精算幅: 140h ~ 180h
  • 精算単価の計算: 単価 ÷ 中央値(160h) = 5,000円/時間

※還元率とは、単価のうち何%がエンジニアの給与(基本給+各種手当)の原資になるかを示す割合です。
※精算単価は、上限を超えたり下限を下回ったりした場合の時間あたりの単価です。

この前提で、3つのケースを見ていきましょう。

ケース1:稼働時間が精算幅内の場合(170時間)

稼働時間が170時間だった月は、精算幅(140h~180h)の範囲内に収まっています。この場合、追加の精算は発生しません。

  • 給与の計算: 80万円 × 70% = 56万円

あなたの給与(の原資)は56万円となります。

ケース2:稼働時間が上限を超えた場合(190時間)

プロジェクトが繁忙期で、稼働時間が190時間になった月を考えます。これは上限の180時間を10時間超えています。

  1. 超過時間の計算: 190h - 180h = 10時間
  2. 超過分の金額計算: 10時間 × 5,000円/時間 = 50,000円
  3. 超過分を含めた単価: 800,000円 + 50,000円 = 850,000円
  4. 給与の計算: 85万円 × 70% = 59.5万円

上限を超えて働いた分が、しっかりと給与に反映されていることがわかります。

ケース3:稼働時間が下限を下回った場合(135時間)

年末年始や大型連休があり、稼働時間が135時間になった月です。これは下限の140時間を5時間下回っています。

  1. 不足時間の計算: 140h - 135h = 5時間
  2. 不足分の金額計算: 5時間 × 5,000円/時間 = 25,000円
  3. 不足分を差し引いた単価: 800,000円 - 25,000円 = 775,000円
  4. 給与の計算: 77.5万円 × 70% = 54.25万円

稼働時間が少なかった分、給与が減額されています。これが不足精算(控除)です。

エンジニアから見た精算幅のメリット・デメリット

精算幅の仕組みは、エンジニアにとって良い面も悪い面もあります。両方を理解しておきましょう。

メリット:働いた分が給与に反映されやすい

最大のメリットは、上限を超えて働いた分が「超過精算」として給与に上乗せされる点です。サービス残業が発生しにくく、頑張りが報酬に直結しやすい透明性の高い仕組みと言えます。

デメリット:稼働が少ないと給与が減るリスクがある

逆に、祝日が多かったり、有給休暇を多く取得したりして稼働時間が下限を下回ると、給与が減額されてしまいます。毎月の給与額が安定しにくい点はデメリットと言えるでしょう。

精算幅が「広い」場合と「狭い」場合、どっちが良い?

精算幅は企業によって様々です。「140h-180h」のような一般的な幅もあれば、「160h-200h」のように高めに設定されている場合や、「150h-170h」のように狭い場合もあります。

どちらが良いかは一概には言えませんが、以下のような傾向があります。

  • 幅が広い(例: 140h-200h): 多少の残業では超過精算が発生しにくいが、稼働が少ない月でも給与が減りにくい。安定志向の人向け。
  • 幅が狭い(例: 150h-170h): 少しの残業でも超過精算が発生しやすく、稼いだ分が給与に反映されやすい。バリバリ働いて稼ぎたい人向け。

自分の働き方のスタイルに合った精算幅の企業を選ぶことが重要です。

不利な契約を避ける!契約前に確認すべき3つのチェックポイント

SES企業に入社する際や、新しいプロジェクトに参画する際には、必ず契約内容を確認することが重要です。後で「こんなはずじゃなかった」と後悔しないために、以下の3点は必ずチェックしましょう。

ポイント1:精算幅の設定は適切か?

精算幅が不自然に広くないか、あるいは下限・上限が高すぎたり低すぎたりしないかを確認しましょう。

例えば「160h~200h」という設定の場合、月20日勤務だと毎日1時間の残業(180h)をしても超過精算が発生しません。このような設定は、エンジニアにとって不利になる可能性があります。

一般的な目安は「140h~180h」または「150h~190h」です。この範囲から大きく外れている場合は、なぜその設定なのか理由を確認しましょう。

ポイント2:上限・下限を超えた際の精算単価は明確か?

超過・不足時の精算単価が、契約書に明記されているかを確認してください。一般的には「単価 ÷ 中央時間」で計算されますが、企業によっては独自の計算方法を用いている場合があります。

特に、「超過単価」よりも「不足単価(控除単価)」の方が高く設定されているケースには要注意です。これはエンジニアにとって非常に不利な契約です。

ポイント3:そもそも契約内容を開示してくれるか?

最も重要なポイントです。単価や精算幅、還元率といった契約に関する重要な情報を、エンジニア本人に開示しない企業は避けるべきです。

誠実な企業であれば、自社の評価制度や給与体系について、きちんと説明してくれるはずです。質問に対して曖昧な回答しか返ってこない場合は、注意が必要かもしれません。

SESの精算幅に関するよくある質問(Q&A)

最後に、SESの精算幅についてよく寄せられる質問にお答えします。

Q1. 固定残業代(みなし残業代)との関係は?

A1. 企業によっては、精算幅の考え方と合わせて固定残業代制度を導入している場合があります。例えば、「月20時間分の固定残業代を含む」といった給与体系です。この場合、精算幅の上限を超えた時間から、さらに固定残業時間を超えた分が追加の残業代として支払われる、といった複雑な計算になることがあります。給与体系については、入社前に必ず確認しましょう。

Q2. 待機期間中の給料はどうなりますか?

A2. 次のプロジェクトが決まるまでの待機期間中は、労働基準法に基づき、会社は平均賃金の6割以上の休業手当を支払う義務があります。ただし、会社の指示で研修を受けたり、自社開発を手伝ったりする場合は、通常の勤務とみなされ給与が全額支払われることが一般的です。会社の就業規則を確認しましょう。

Q3. 精算幅がない契約はありますか?

A3. はい、あります。「固定報酬契約」や「月額固定」と呼ばれる契約で、稼働時間に関わらず毎月の報酬が一定です。この場合、残業をしても追加の報酬は支払われないことが多いため、注意が必要です。ただし、その分、稼働が少ない月でも給与が減らないという安定性があります。

まとめ:精算幅を理解して、自分の価値を正当に評価してもらおう

今回は、SESにおける精算幅の仕組みについて、計算方法や注意点を交えながら詳しく解説しました。

  • 精算幅は、月々の報酬を定めるための基準時間(例: 140h-180h)。
  • 上限を超えれば超過精算、下限を下回れば不足精算(控除)が発生する。
  • 自分の給与がどう決まるか、具体的な計算方法を理解しておくことが重要。
  • 契約前には「精算幅の設定」「精算単価」「情報開示の有無」を必ず確認する。

精算幅は、SESエンジニアの給与を決定づける重要なルールです。この仕組みを正しく理解し、自身の契約内容を把握することは、不当な搾取から身を守り、自分の働きを正当に評価してもらうための強力な武器となります。

もし現在の会社の給与体系や還元率に疑問を感じたら、それはキャリアを見直す良い機会かもしれません。

より良い条件を求めるなら、転職のプロに相談するのも一つの手

  • 「自分の単価や還元率は、市場価値と比べて適正なのだろうか?」
  • 「もっとエンジニアに寄り添った評価制度の会社で働きたい…」

もしあなたが今の環境に少しでも不安や不満を感じているなら、転職エージェントに相談してみることをおすすめします。

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