SESで「リファクタリングできない」と諦めていませんか?技術的負債と戦うエンジニアのための戦略と脱却法
SES現場でリファクタリングを阻む壁を乗り越える具体的な戦略を解説。技術的負債を解消するための提案のコツ、ビジネス価値の伝え方、そして改善できない環境から脱却する方法を解説します。
キャリアパス診断してみるなぜSES現場でリファクタリングは「できない」のか?構造的な3つの壁
「目の前のレガシーコードをどうにかしたい。でも、時間も予算も契約も許してくれない」
SES(System Engineering Service)として客先常駐しているエンジニアなら、誰もが一度は直面するこのジレンマ。
リファクタリングは、コードの品質を保ち、長期的な生産性を高めるために不可欠な作業です。しかし、あなたが「リファクタリング できない」と悩む背景には、技術的な問題だけでなく、SES特有の構造的な問題が存在します。この壁を認識することが、改善への第一歩です。
壁1:契約と工数見積もりの問題(準委任契約の罠)
多くのSES契約は「準委任契約」です。これは、特定の成果物ではなく、「労働力(工数)」を提供することに対して報酬が支払われる形態です。
クライアントの視点から見ると、リファクタリングは「機能追加」や「バグ修正」といった直接的な成果を生みません。そのため、工数見積もりの段階でリファクタリングの時間を確保することが非常に難しくなります。PMや上層部にとって、それは「コスト」としてしか見えず、予算や納期を圧迫する要因と見なされがちです。
壁2:コードの「オーナーシップ」の欠如
客先常駐のエンジニアは、そのシステムの「一時的な管理者」である場合が多く、コードに対する強いオーナーシップを持ちにくい傾向があります。システムの長期的な健全性よりも、契約期間内のタスク完了が優先されやすいのです。
技術的負債が溜まっていると認識していても、その解消によって得られる長期的なメリット(例えば、将来的なメンテナンスコストの削減)が、クライアント側に強く認識されていない限り、短期的なタスクに時間を割かざるを得なくなります。
壁3:リファクタリングのビジネス価値が伝わらない
リファクタリングは、エンジニアにとっては「当然やるべきこと」ですが、非エンジニアの経営層やPMにとっては「よくわからない技術用語」です。彼らが理解できるのは、「費用対効果」と「リスク」だけです。
単に「コードを綺麗にしたい」と提案しても、それは趣味と見なされます。この壁を打ち破るには、リファクタリングを技術的な視点から切り離し、明確なビジネス価値として再定義する必要があります。
「時間がない」は言い訳にしない:技術的負債を可視化する戦略
「リファクタリングする時間がない」という状況は、実は技術的負債がすでに生産性を蝕んでいる証拠です。この悪循環を断ち切るには、感情論ではなく、データに基づいて現状のリスクとコストを可視化する必要があります。
リファクタリングの「費用対効果」を明確にする
提案を通すために最も重要なのは、リファクタリングが将来のコスト削減に繋がることを具体的に示すことです。
具体例:
「現状、A機能の修正には平均8時間かかっています。原因は複雑な依存関係です。これをリファクタリング(工数16時間)することで、今後の修正工数を平均2時間に短縮できます。年間10回修正が発生すると仮定すると、1年で(8-2)×10 = 60時間の工数削減になります。」
小さな改善を積み重ねる「ボーイスカウト・ルール」の適用
大規模なリファクタリングの提案が難しい場合、日常のタスクの中で少しずつ改善を行う「ボーイスカウト・ルール」を適用しましょう。
ボーイスカウト・ルール: 「来た時よりも美しくして去る」
バグ修正や機能追加で既存のコードに触れる際、その周辺のコードを少しだけ(5分〜10分程度)綺麗にしてから、本来のタスクを完了させます。これは工数として計上しづらいですが、塵も積もれば山となります。ただし、この際、既存の挙動を変えないよう細心の注意が必要です。
「テストコードがない」状況でのリスクヘッジ
レガシーコードの現場では、テストコードが存在しないことがリファクタリングを阻む最大の要因の一つです。テストがない状態で手を加えることは、新たなバグを生む大きなリスクとなります。
もし時間があれば、リファクタリング対象のコードに手を加える前に、まず境界条件をカバーする最小限のテストコードを記述することを推奨します。これにより、リファクタリングによって意図せぬ副作用が発生していないことを担保できます。この「テストを書く時間」も、提案の際には「品質保証のための工数」として含めるべきです。
現場を変える!リファクタリング提案を成功させる「3つの型」
リファクタリングの提案は、クライアントやPMの最も関心が高いテーマ(リスク、コスト、生産性)に合わせて切り口を変えることで、成功率が格段に向上します。
型1:リスク回避型(「このままではシステムが停止します」)
最も強力な提案の切り口は「リスク」です。システム停止やセキュリティ脆弱性は、クライアントにとって最大の懸念事項です。
- 提案例: 「このモジュールは複雑度が高く、特定の条件下でメモリリークが発生する可能性があります。このままでは、トラフィック増加時にシステムが停止し、〇〇円の機会損失が発生するリスクがあります。リファクタリングにより、このリスクをゼロにできます。」
型2:生産性向上型(「〇〇のタスク工数が半減します」)
日常の業務効率化に直結する改善は、PMや現場担当者の賛同を得やすいです。
- 提案例: 「現在、新機能の開発において、データベース接続処理の記述に毎回30分かかっています。共通化(リファクタリング)することで、この作業がゼロになり、開発の生産性が10%向上します。」
型3:学習・定着型(「新人がすぐにキャッチアップできるようになります」)
人材育成やチームの持続可能性を訴える切り口です。特に、人の入れ替わりが多い現場で有効です。
- 提案例: 「現在のコードベースは特定の人のみ理解できる状態です。これを設計パターンに基づきリファクタリングすることで、新しく参画するエンジニアがすぐにキャッチアップできるようになり、引継ぎ工数が大幅に削減されます。」
リファクタリング「できない」環境から脱却するキャリア戦略
構造的な問題により、どれだけ努力してもリファクタリングができない環境が続く場合、それはあなたの技術者としての成長を阻害し続けます。いつまでも技術的負債に苛まれる環境に留まる必要はありません。
現場を変える努力と見切りをつける基準
以下の状況が1年以上継続する場合、その環境が根本的に改善される可能性は低いと判断し、次のステップを検討するタイミングかもしれません。
- 提案が常に却下される: ビジネス価値を提示しても、短期的な利益が優先され続ける。
- 技術的負債が減るどころか増え続ける: 修正よりも機能追加のスピードが圧倒的に速い。
- 技術者としてのオーナーシップを否定される: 「言われたことだけやればいい」という文化が根付いている。
「技術的負債解消」を経験値に変える
たとえリファクタリングの実行が限定的であったとしても、そのプロセスはあなたの大きな経験値になります。
- 負債の特定と分析: どこに、なぜ負債があるのかを特定する能力。
- 費用対効果の算出: 技術的な課題をビジネス言語に変換し、工数見積もりを行う能力。
- 関係者とのコミュニケーション: PMやクライアントを説得する交渉力。
これらは、あなたが次に自社開発企業やより技術志向の強い組織へ転職する際に、強力なアピールポイントとなります。
オーナーシップを持って開発できる環境へ(自社開発・プロダクト開発)
もしあなたが、コードの品質とシステムの長期的な健全性に責任を持ちたいと強く願うなら、自社開発やプロダクト開発を主とする企業へのキャリアチェンジを検討すべきです。
これらの企業では、開発者自身がシステムのオーナーシップを持ち、リファクタリングは「将来の投資」として正しく評価されます。技術者としての成長と、コード改善への情熱を満たすための最善の選択肢となるでしょう。
よくある質問(FAQ)
Q. リファクタリングは勝手にやってもいいですか?
A. 基本的にはNGです。リファクタリングは、たとえコードの挙動を変えなくても、予期せぬバグを生むリスクを常に伴います。必ずPMやチームリーダーに相談し、工数として承認を得てから行いましょう。もし無許可で行う場合は、必ず小さな範囲に限定し、徹底したテストとレビュー体制のもとで行ってください。
Q. どのくらいの工数なら提案が通りやすいですか?
A. 初期の提案としては、1〜2日(8〜16時間)程度の工数に収まるものが通りやすい傾向があります。これは、PMがリスクを取りやすい範囲であり、「試しにやってみよう」という判断を引き出しやすいためです。まずは小さな成功体験を積み重ね、信頼を得てから、より大きなリファクタリングの提案に繋げましょう。
まとめ
SES現場で「リファクタリングできない」という悩みは、決してあなたの能力不足ではなく、契約や現場の構造に起因するものです。しかし、優秀なエンジニアは、その構造の中でいかに改善を進めるか、あるいは改善できない環境からいかに脱却するかを戦略的に考えます。
技術的負債をビジネスリスクとして可視化し、適切な「提案の型」を用いて関係者を巻き込みましょう。そして、もしあなたの努力が報われず、技術者としての成長が頭打ちになっていると感じるなら、オーナーシップを持って開発ができる新たな環境を探すことも、プロのエンジニアとしての重要な決断です。
職務経歴書の添削やキャリア相談はプロに任せるのも一つの手
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応エン