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SES契約の「精算幅 上限超え」はサービス残業?エンジニアが知るべき仕組みと対処法

SES契約の精算幅(上下限)の仕組みを解説。上限を超えた場合に残業代が出ない理由や、契約書で確認すべきポイント、サービス残業を防ぐための具体的な対処法をエンジニア向けに詳解します。

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「今月は忙しくて残業が多かったのに、給与明細を見ると残業代がほとんど増えていない…」

SES(システムエンジニアリングサービス)契約で働くエンジニアにとって、「精算幅」は自分の労働条件と報酬に直結する、最も重要なキーワードの一つです。特に契約書に記載されている「精算幅の上限」を超えて働いた場合、その超過分がクライアント側から支払われず、結果的にサービス残業になってしまうケースが後を絶ちません。

あなたは、契約書に書かれている140時間〜180時間といった数字が何を意味し、上限を超えた場合にどのようなリスクがあるのか、明確に答えられますか?

この記事では、SES契約の専門知識と、労働法的な視点を交えながら、精算幅の仕組みを徹底解説します。この知識を身につけることで、不当な労働を防ぎ、自身の市場価値に見合った報酬を得るための具体的な対処法がわかります。

1. SES契約における「精算幅」とは何か?基本を理解する

精算幅とは、SES契約において、月間の基準労働時間に対して許容される「労働時間の範囲」のことです。この範囲内で働いた場合、契約時に決められた月額単価(報酬)が変動することはありません。

1-1. なぜ精算幅が必要なのか?(準委任契約の性質)

SES契約の多くは「準委任契約」という契約形態で結ばれます。これは、特定の業務の遂行ではなく、「労働力」や「技術力の提供」自体を目的とする契約です。

準委任契約は、成果物の完成を目的とする「請負契約」とは異なり、労働時間に基づいて報酬が決められることが一般的です。しかし、毎月の労働時間は、祝日や業務都合によって多少変動します。そこで、契約の安定性を保つために「この範囲内の時間であれば、単価は固定とします」という取り決め、つまり精算幅が設けられるのです。

1-2. 精算幅の計算式と一般的な設定(140時間~180時間など)

精算幅は通常、「基準時間」を中心に設定されます。

  • 基準時間: 1ヶ月あたりの所定労働時間(例:160時間)
  • 精算幅の下限: 基準時間からマイナスされた時間(例:140時間)
  • 精算幅の上限: 基準時間からプラスされた時間(例:180時間)

この場合、140時間から180時間の範囲で働いた場合、報酬は常に固定の月額単価となります。

  • 下限を下回った場合(140時間未満): 単価が減額される(控除)
  • 上限を超過した場合(180時間超): 単価が加算される(超過料金)

特に注意が必要なのは、この「超過料金」の計算ルールです。ここにサービス残業の温床が隠されています。

2. 「精算幅の上限超え」が発生する仕組みとリスク

精算幅の上限(例:180時間)を超えて働いた場合、契約上は「超過料金」が支払われるはずです。しかし、実際にはこの超過料金が支払われない、あるいは非常に低い単価でしか支払われないケースが多く見られます。

2-1. 上限超えが発生した際の契約上の処理

契約書には、上限を超えた場合の「超過単価」が定められています。例えば、月額単価が60万円、基準時間160時間の場合、時間単価は約3,750円です。

しかし、超過単価が「時間単価の1/2」や「定額」など、極端に低く設定されている場合があります。これは、クライアント側が残業を抑制したい、または超過分のコスト負担を抑えたい意図があるためです。

さらに悪質なケースでは、「上限を超えた分の作業については、事前にクライアントの承認がない限り、対価を支払わない」という文言が盛り込まれていることがあります。

2-2. サービス残業化しやすい構造:みなし残業との違い

多くのSESエンジニアが所属する企業は、社員に対して「みなし残業制度」(固定残業代制度)を適用している場合があります。しかし、このみなし残業と、SES契約の精算幅の上限超えは、別の問題として考える必要があります。

  • みなし残業: 雇用契約(会社と社員間)の問題。定められた時間(例:20時間)までの残業代は固定給に含まれる。
  • 精算幅の上限超え: 準委任契約(会社とクライアント間)の問題。クライアントから超過料金が支払われるかどうかが決まる。

サービス残業が発生するロジック

  1. エンジニアが上限を超えて残業する(例:200時間労働)。
  2. クライアントとSES企業間の契約では、超過分(20時間)の支払いがないか、単価が低い。
  3. SES企業は、社員に対して労働基準法に基づき残業代を支払う義務がある。
  4. しかし、クライアントから超過分の単価が入ってこないため、SES企業は「赤字」になる。
  5. 結果、SES企業は社員に対し、「残業するな」「サービス残業で処理しろ」と暗に、または公に圧力をかける。

これが、精算幅の上限超えが、エンジニアのサービス残業に直結しやすい構造です。

2-3. エンジニアが被る最大のデメリット

精算幅の知識不足がもたらす最大のデメリットは、「労働の対価が正しく支払われない」ことです。

契約書に縛られて、クライアントから超過料金が支払われない場合、あなたの会社はあなたに残業代を支払っても、その分をクライアントに請求できません。会社は「優秀なエンジニアに長く働いてもらっている」のではなく、「赤字を生み出す労働」と見なす可能性すらあります。

これは、個人の評価低下や昇給の妨げにもつながりかねません。

3. 【対処法】上限超えによる不利益を防ぐための行動

精算幅に関するリスクを回避し、サービス残業を防ぐためには、エンジニア自身が契約と労働時間管理を徹底する必要があります。

3-1. 契約書で必ず確認すべき3つの重要項目

クライアントとの契約書(または自社との雇用契約書)を確認する際、以下の3点を徹底的にチェックしてください。

  1. 時間単価の確認: 基準時間と月額単価から算出した時間単価と、超過時間の単価が同等であるか?(通常、労働基準法に基づけば、残業代は1.25倍以上であるべきですが、準委任契約の超過料金はそれが適用されないことが多い。それでも極端に低い設定でないか確認する。)
  2. 超過承認の有無: 「超過時間分の料金支払いには、事前の書面による承認を要する」といった文言がないか?この文言がある場合、承認なしの残業はすべてサービス残業になるリスクが高いです。
  3. 清算期間の確認: 清算期間が月単位か、それともプロジェクト単位か。期間が長いほど、労働時間の調整が難しくなるため、月単位が望ましいです。

3-2. 労働時間の管理と記録の徹底

口頭での残業指示や、曖昧な勤怠管理は、サービス残業の温床です。以下の記録を徹底してください。

  • 勤怠ログ: 会社指定のシステムだけでなく、個人のPCやスマートフォンで、出退勤時刻を秒単位で記録する。
  • 残業指示の証拠: クライアントや上司からの残業指示は、メールやチャットなど、記録が残る形で受け取るようにする。
  • 業務報告: 業務報告書(日報・週報)に、実働時間を正確に記載し、提出する。

上限を超えそうになったら、必ず事前に上司やクライアントに報告し、「契約上の上限を超過する見込みだが、この業務は継続する必要があるか」を問い、書面で指示をもらうことが重要です。

3-3. 会社やクライアントとの交渉術

精算幅の上限がタイトすぎる(例:160時間〜180時間など)場合、プロジェクト開始前に交渉の余地があります。

  • 事実ベースで交渉する: 「このプロジェクトの要求仕様(要件定義)を鑑みると、月に最低200時間は必要になる見込みです。契約上の上限を200時間に引き上げるか、追加の工数(人員)を投入すべきです」と具体的に提言する。
  • リスクを明示する: 上限を超過した場合、作業の品質や納期に影響が出る可能性を説明し、労働時間と成果のバランスを保つよう促す。

4. よくある質問(FAQ)

Q1. 「下限割れ」した場合はどうなる?

精算幅の下限(例:140時間)を下回った場合、原則として、SES企業がクライアントに請求できる金額が減額されます。これは「控除」と呼ばれます。

もしあなたが正社員であれば、労働基準法に基づき、会社はあなたに所定の給与を支払う義務があります。しかし、会社はクライアントからの収入が減るため、あなたに対して「有給休暇の利用」や「代休の取得」を促す可能性があります。下限割れが頻繁に発生する場合は、プロジェクトのアサイン状況や会社の経営状況に問題がある可能性があります。

Q2. 精算幅がない契約はエンジニアにとって有利?

精算幅がない契約、つまり「○○時間あたり○○円」という完全な時間精算型の契約は、一見すると働いた分だけ報酬が得られるため公平に見えます。

しかし、この契約は「基準時間」がないため、労働時間が不安定になりがちです。クライアント側の都合で急に作業量が減らされた場合、収入が大幅に減少するリスクがあります。安定した収入を求める場合は、適切な精算幅が設定されている方が望ましいとされます。

5. 契約内容に不安があるなら、次のキャリアを検討しよう

SES契約の精算幅は、エンジニアの労働環境と報酬の透明性を示すバロメーターです。

もし、あなたの会社が精算幅の仕組みを悪用し、サービス残業を強いるような体質であるなら、それはエンジニアとして成長できる環境とは言えません。知識武装をした上で交渉しても改善が見られない場合は、より健全な契約形態や、正当な報酬が支払われる企業への転職を検討すべきです。

あなたの技術力と時間は、正しく評価されるべき価値を持っています。


職務経歴書の添削やキャリア相談はプロに任せるのも一つの手

「今の契約内容や労働条件が、自分の市場価値に見合っているのか客観的な意見が欲しい…」
「サービス残業のない、より単価の高いプロジェクトに参画したいが、どう交渉すれば良いか分からない…」

もし一人で悩んでいるなら、IT・Web業界に特化した転職エージェントに相談するのは非常に有効な手段です。

特に、エンジニアの契約形態や単価交渉のノウハウを持つエージェントは、あなたの職務経歴書をより魅力的にするための具体的なアドバイスをくれるだけでなく、現在の市場価値を正しく評価してくれる企業とのマッチングをサポートしてくれます。あなたの理想とする労働条件や報酬を実現するために、まずは無料相談から始めてみてはいかがでしょうか。

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