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SES事業の「エクセル管理」は限界?非効率から脱却する案件・顧客管理のステップ

SES事業の案件・顧客管理をエクセルで行うことの具体的なリスクと非効率性を解説。ファイルの属人化、契約更新漏れを防ぎ、管理を効率化するための具体的なステップと、最適なツールの選び方を解説します。

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多くのSES(システムエンジニアリングサービス)企業、特に成長途上の企業では、顧客情報、案件進捗、そして所属エンジニアの稼働状況といった重要データをMicrosoft Excelで管理していることでしょう。しかし、事業規模が拡大し、管理すべき案件数やエンジニアの人数が増えるにつれて、「エクセル管理」の非効率性が顕在化し、管理部門や営業担当者の大きな負担となっています。

「ファイルが多すぎてどれが最新か分からない」「契約更新の確認作業だけで一日が終わる」「経営層に報告するデータの集計に時間がかかりすぎる」—もしあなたがこのような悩みを抱えているなら、本記事は現状の課題を明確にし、非効率な管理体制から脱却するための具体的なステップをご提案します。

SES事業におけるエクセル管理の現実と「3つの限界」

エクセルは手軽で柔軟性が高いツールですが、SES特有の複雑な管理業務においては、すぐにその限界に直面します。特に以下の3点は、事業継続上の大きなリスクとなり得ます。

限界1: データの属人化とリアルタイム性の欠如

エクセルファイルはローカル環境や共有フォルダで管理されることが多く、誰がいつ、どの情報を更新したのかが不透明になりがちです。特定の担当者しかファイルの構造を理解していない「属人化」が発生すると、担当者の不在時に業務が滞ります。

また、データがリアルタイムで共有されないため、営業担当者が参照している稼働状況が古く、既に埋まっているエンジニアを提案してしまう、といった機会損失につながるミスが発生しやすくなります。

限界2: 煩雑な更新作業とヒューマンエラーのリスク(特に契約管理)

SES事業の生命線は「契約管理」です。エンジニア一人ひとりについて、単価、契約開始日、終了日、精算幅(見込み残業時間や超過単価)など、複雑な情報を正確に管理しなければなりません。

エクセルでは、これらの契約情報を月末ごとに手動でチェックし、更新・集計する必要があります。この手作業が多いほど、日付の入力ミスや計算式の参照ミスといったヒューマンエラーが発生するリスクが高まります。特に契約更新や終了の通知漏れは、売上機会の喪失や顧客との信頼関係の毀損に直結します。

限界3: 経営判断に必要な「可視化」が困難

エクセルはデータの入力・保存には優れていますが、大量のデータから特定の傾向や指標を抽出する分析機能は限定的です。

例えば、「来月、契約終了を迎える高単価なエンジニアの割合」「稼働率が低い部署の特定」「過去3ヶ月で最も利益率が高かった案件タイプ」といった経営判断に必要な情報を得るためには、複雑なピボットテーブルやVBAを駆使する必要があり、非常に時間がかかります。データ集計が遅れると、迅速な戦略立案ができなくなります。

エクセルで管理すべき「必須のデータ項目」

脱エクセルを目指すにしても、まずは「何を管理すべきか」を明確に定義することが重要です。SES管理においては、最低限以下の2つのマスタ(台帳)を整備する必要があります。

エンジニアマスタで管理すべき情報

これは所属エンジニア全員の基本情報、スキル、現在の稼働状況を集約する台帳です。

項目

具体的な内容

基本情報

氏名、社員番号、所属部署、入社日

スキル

使用言語、得意な技術領域、経験年数、資格

契約情報

契約形態(正社員/契約社員/業務委託)、単金(社内原価)

稼働状況

現在のアサイン先、契約開始日、契約終了日、稼働率(見込み)

案件・顧客マスタで管理すべき情報

顧客情報、案件の詳細、そしてアサインされたエンジニアの情報を紐づける台帳です。

項目

具体的な内容

顧客情報

企業名、担当者名、連絡先、取引開始日

案件情報

案件名、プロジェクト概要、契約単金(売上)、精算幅

アサイン状況

アサインされたエンジニア名(エンジニアマスタと連携)、アサイン期間

進捗/ステータス

契約中、終了予定、終了済み、提案中

このマスタの構造を定義し、各データが一意に識別できるID(キー)を付与することが、データ連携の第一歩となります。

脱エクセルへ!非効率な管理体制から脱却する3つのステップ

エクセル管理の課題を認識したら、次は具体的な行動に移るべきです。大規模なシステム導入はハードルが高いため、まずは以下の3ステップで管理体制の改善を進めましょう。

ステップ1: マスタデータの統合と「管理ルール」の厳格化

まずは、分散しているエンジニア情報、顧客情報、案件情報を一つのデータベース(エクセルでも可)に集約します。そして、最も重要なのは「ルール」を作ることです。

  • 入力形式の標準化: 日付の形式、顧客名の表記ゆれ(例:「株式会社」を略すか否か)を統一します。
  • 更新担当者の明確化: 「このマスタを更新するのは〇〇部署のAさんのみ」と定め、データの鮮度に対する責任を明確にします。
  • データ連携の定義: エンジニアマスタと案件マスタを、特定のIDを用いて必ず連携させる仕組みを構築します。

ステップ2: エクセルでできる「最後の効率化」(関数・VBAの活用)

すぐに専用ツールを導入できない場合でも、エクセルの機能を最大限活用することで、一時的に効率を上げることができます。

  1. VLOOKUP/XLOOKUP関数の活用: 複数のマスタ間でデータを連携させ、重複入力をなくします。
  2. 条件付き書式の設定: 契約終了日が迫っている行(例:残り30日以内)を自動で赤色にするなど、視覚的にリスクを把握できるようにします。
  3. 入力規則(データの入力規制): プルダウンリストを作成し、担当者による自由な文字列入力を防ぐことで、表記ゆれによるデータ破損を予防します。

しかし、これはあくまで応急処置です。事業規模が拡大し、データ量が増えるほど、ファイル破損や処理速度の低下といった問題は避けられません。

ステップ3: 専門の案件管理ツール(SaaS)導入の検討

エクセル管理の限界を感じたら、SES事業特有のニーズに対応した専門の管理ツール(CRM/SFA)の導入を真剣に検討すべきです。

専門ツールを導入することで、データがクラウド上の単一データベースに集約され、リアルタイムでの情報共有が可能になります。また、契約期間の自動アラート機能や、複雑な売上・原価計算の自動化が実現し、管理部門の負荷を劇的に軽減できます。

案件管理ツールを選ぶ際の重要チェックリスト

SES特有のニーズに対応しているか

一般的なCRMやSFAツールでは、SES特有の「エンジニアの稼働率管理」「多重契約(一人のエンジニアが複数のプロジェクトに関わる場合)の管理」「複雑な精算計算」に対応できない場合があります。必ず、SES/人材派遣業界向けに開発されたツールを検討してください。

  • 稼働率の可視化: エンジニアごとのアサイン状況や予実(予定と実績)がグラフで確認できるか。
  • 契約更新アラート: 契約終了日の〇日前、といったアラート設定が柔軟にできるか。
  • 多段階の単価管理: 顧客への売上単価と、エンジニアへの支払原価を同時に管理し、利益率を自動計算できるか。

既存システム(会計・勤怠)との連携性

管理ツールが孤立してしまうと、結局、エクセルへの転記作業が発生し、非効率が解消されません。

既に利用している会計システムや勤怠管理システムと、データ連携(API連携など)ができるかどうかは非常に重要です。例えば、勤怠実績データを管理ツールに取り込むことで、請求書作成や給与計算の工数を大幅に削減できます。

よくある質問(FAQ)

Q1: エクセル管理からツールへ移行する最適なタイミングはいつですか?

A: 管理するエンジニア数が30名を超え、手動での契約更新チェックに週に数時間以上かかるようになったら、移行を検討する最適なタイミングです。また、経営層から「最新の稼働率や利益率をすぐに把握したい」という要望が増えた時も、ツールの導入効果が高まります。

Q2: 導入費用はどのくらいかかりますか?

A: ツールによりますが、月額数万円から数十万円が一般的です。重要なのは、導入費用と工数削減による人件費の削減効果(ROI)を比較することです。管理工数が月20時間削減できれば、それだけでツール費用を上回る可能性があります。

Q3: 導入時に最も注意すべき点は何ですか?

A: 既存のエクセルデータを新しいツールへ移行(データクレンジング)する作業が最も重要かつ大変です。過去のデータに表記ゆれや抜け漏れがないか事前に確認し、新システムに合わせてデータを整形する作業に十分なリソースを割く必要があります。

まとめ:データ管理の最適化が事業成長の鍵

SES事業の成長は、優秀なエンジニアの確保と、案件・顧客・契約を正確に管理する能力にかかっています。エクセル管理は小規模なうちは有効ですが、事業拡大とともにリスクを高め、管理部門の疲弊を招きます。

本記事で解説したステップを踏まえ、まずはマスタの定義とルールの厳格化から始め、段階的に専門の管理ツール導入へと進めていきましょう。データ管理を最適化することで、ヒューマンエラーのリスクを減らし、営業活動や経営判断に活かせる「生きたデータ」を手に入れることができます。

管理体制を強化し、事業の成長を加速させるために、次のステップを踏み出しましょう。

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