SESで「中抜きされすぎ」と感じたら読む記事|構造・見極め方・報酬を上げる戦略
SESで「中抜きされすぎ」と感じる理由は、単に給料が低いからではありません。多重下請けや商流、契約の仕組みを整理し、適正な報酬を得るための見極め方と具体策を解説します。
「エンドはもっと払っているはずなのに、自分の給料はなぜこの水準なんだろう」
SESで働いていると、こうした違和感を持つ場面は珍しくありません。特に客先常駐が長く、評価されている実感はあるのに年収が伸びないと、「中抜きされすぎでは」と感じやすくなります。
ただ、ここで大事なのは、差額があること自体と、不必要に取り分が減っていることを分けて考えることです。公正取引委員会はソフトウェア業の実態調査で、多重下請構造の中で不必要な「中抜き」事業者の存在を感じる事業者が多いことや、複雑な取引関係が違反行為を誘引・助長するおそれを指摘しています。つまり、違和感は気のせいではない一方で、感情だけで判断すると本質を見誤ります。
この記事では、SESの中抜き構造を整理したうえで、どこからが本当に危険なのか、そして適正な報酬を得るために何を変えるべきかを実務目線で解説します。読んだあとに「今の会社で交渉すべきか」「転職で商流や行き先を変えるべきか」を判断しやすくなるはずです。
SESで「中抜きされすぎ」と感じるのはなぜか
給与が低いだけでなく、商流とお金の流れが見えにくい
SESで不満が強くなりやすいのは、単に給与額の問題だけではありません。
自分がどの商流にいるのか、会社が何の役割を担い、その差額が何に使われているのかが見えにくいからです。
厚生労働省は派遣制度におけるマージンについて、会社の利益だけでなく、社会保険料や教育訓練費なども含まれると説明しています。また、マージン率は低ければよいわけではなく、ほかの情報とあわせて総合的に見るべきだとしています。制度は派遣の説明ですが、「差額のすべてが純利益ではない」という見方は、SESの報酬構造を考えるうえでも参考になります。
一方で、差額の説明がまったくない会社は要注意です。現場目線で見ると、営業、待機リスクの吸収、採用、教育、労務管理などにコストがかかるのは自然です。しかし、そこに商流の深さだけで増えている中間コストが重なると、エンジニア本人には価値の実感がないまま取り分だけが薄くなりやすくなります。
差額のすべてが不当な搾取とは限らない
「給与と請求額の差がある=即ブラック」と決めつけるのは危険です。
会社が雇用責任を負う以上、案件が終わったあとの待機リスク、社会保険、営業、人事、教育、管理部門の費用は発生します。だからこそ、差額があること自体と、差額に見合う価値や説明があるかは分けて見る必要があります。
ここは誤解されやすいポイントですが、問題なのは「会社が取り分を持つこと」そのものではありません。
問題なのは、何に対する対価なのか説明できないまま、商流だけが深く、本人の成長や報酬に反映されない状態です。
ただし多重下請けで不必要な中間コストが増えることはある
公正取引委員会は、ソフトウェア業の調査で、多くの事業者が不必要な「中抜き」事業者の存在を感じていること、多重下請構造が情報伝達の混乱や違反行為の誘引につながりやすいことを示しています。さらに、契約内容が必ずしも明確でないことも問題として挙げています。
つまり、SESで「中抜きされすぎ」と感じるときは、被害妄想ではなく、業界構造の問題にぶつかっている可能性があるということです。
だからこそ、次にやるべきは愚痴ではなく、構造の把握です。
SESの中抜き構造を理解する前に知っておきたい契約の基本
SESは準委任・請負の考え方で運用されることが多い
厚労省の資料では、請負だけでなく委任・準委任も含めて業務委託の整理が示されています。SESは現場では「準委任」として扱われることが多く、成果物の完成そのものより、一定の業務を遂行する前提で動く案件も少なくありません。
ここを理解しておくと、なぜ同じ常駐でも会社によって扱いが大きく違うのかが見えてきます。
読者が注目すべきなのは契約書の名前より、実際に誰が指示を出し、誰が責任を持っているかです。
派遣との違いは「誰が指示を出すか」
厚労省は、派遣については派遣先から仕事の指示を行える制度だと説明しています。一方、請負や業務委託では、発注者と請負労働者の間に指揮命令関係は生じず、発注者が直接指示してはいけないとしています。
この違いは、報酬だけでなく働きやすさにも直結します。
指示系統が曖昧な現場ほど、評価も責任も曖昧になりやすく、「頑張っているのに自社で評価されない」という不満が起こりやすいからです。
常駐先から直接指示されるなら偽装請負に注意
東京労働局は、形式上は請負や委任でも、実態として発注者から直接作業指示が行われている場合は偽装請負である可能性が高いと案内しています。厚労省の資料でも、適正な請負では発注者が請負労働者へ直接仕事の指示をしてはならないと明示されています。
ここは見落としやすいのですが、「客先常駐だから普通」と流してはいけないポイントです。
もし常駐先の管理職から毎日のタスク指示、勤怠管理、評価まで直接受けているなら、報酬以前に働き方そのものを見直したほうがよいケースがあります。
どこからが「中抜きされすぎ」なのかを見極めるポイント
商流の深さが説明されない
まず確認したいのは、あなたの案件が何次請けなのかです。
1社入るごとに必ず悪いわけではありませんが、商流が深いほど、情報も単価も伝言ゲームになりやすくなります。公取委も、複雑な取引関係や契約不明確さが問題を生みやすいとしています。
面談や社内面談で、少なくとも次の点が説明されないなら注意です。
- 商流は何社か
- 自社はどの立場で入っているか
- 単価が上がると給与へどう反映されるか
この3つが曖昧なままだと、今の低年収が「一時的なもの」なのか「構造的に上がりにくいもの」なのか判断できません。
単価・昇給ルール・評価基準が不透明
「評価しています」「頑張りは見ています」だけで昇給ルールがない会社は、かなり危険です。
特にSESでは、現場評価が自社の給与制度へどう戻ってくるかが重要です。ここが切れていると、常駐先では重宝されても、所属会社では年収がほとんど動かない状態になりがちです。
現場で案件を見ていると、報酬が伸びる人には共通点があります。
それは、技術が高い人だけではなく、何を任され、何を改善し、どこまで責任範囲が広がったかを会社側が把握できている人です。逆に、現場で便利屋化しているのに、その情報が所属会社に戻っていない人は損をしやすいです。
案件を選べず、スキルが積み上がらない
中抜きがつらい本当の理由は、今月の給与差だけではありません。
今の働き方を続けても、市場価値が上がる実感がないことです。
たとえば、監視、テスト、保守運用だけを長く続けていて、設計・改善提案・顧客折衝・レビュー経験が増えないなら、単価交渉の材料が増えません。
この状態で商流だけ深いと、収入もキャリアも動きにくくなります。
表面上は高還元でも注意が必要なケース
ここもよくある誤解です。
「高還元SES」と書いてあるだけで安心はできません。
還元率が高く見えても、次のようなケースでは実質的に得とは限りません。
- 待機時の給与が大きく下がる
- 福利厚生や学習支援が薄い
- 単価の高い案件に入れない
- 評価より案件ガチャの影響が大きい
数字だけでなく、どういう条件でその数字が成り立つのかまで確認することが大切です。
SESで適正な報酬を得るための全戦略
商流の浅い案件・会社に寄せる
いちばん効果が大きいのは、商流を浅くすることです。
同じスキルでも、エンド直や元請けに近い案件のほうが、単価の原資が残りやすくなります。
転職で見るべきなのは、「SESかどうか」よりも、次の2点です。
- 商流の浅い案件をどれだけ持っているか
- その案件に若手〜中堅でも入れるか
SESを完全に辞めなくても、商流の浅い会社へ移るだけで条件が改善することはあります。
逆に、会社名はきれいでも、深い商流の下流に固定されるなら改善は限定的です。
市場で評価されやすい経験を増やす
報酬を上げたいなら、「今できる作業」ではなく「今後単価が上がる経験」を取りに行く必要があります。
具体的には、次のような経験は転職時に説明しやすく、条件改善につながりやすいです。
- 詳細設計や基本設計
- 顧客との調整や要件整理
- 障害原因の切り分けと再発防止
- コードレビューや育成
- クラウド、セキュリティ、データ基盤などの再現性が高い領域
PM・設計に近い立場から見ると、現場で本当に評価されるのは「言われたことをこなす人」だけではありません。
曖昧な要求を整理し、周囲と擦り合わせ、前に進められる人です。そうした経験は、単なる常駐歴よりずっと強い武器になります。
営業任せにせず、自分でも条件を確認する
報酬改善で失敗しやすいのは、「営業が何とかしてくれるはず」と受け身になることです。
SESでは、自分で確認した人と、何となく流された人の差が大きく出ます。
最低限、次の質問には答えを持っておきたいところです。
- 自分の案件単価はどのレンジか
- 次に単価が上がる条件は何か
- 現場評価は誰がどう回収しているか
- 次の案件でどんな経験を積ませたいのか
この会話にまともに答えられない会社は、エンジニアのキャリアを“配属”でしか見ていない可能性があります。
転職で報酬を上げるなら「行き先」で考える
SESを辞めたいと感じたとき、選択肢はひとつではありません。
大きく分けると、次の4方向があります。
- 商流の浅いSESへ移る
- 受託開発へ移る
- 自社開発へ移る
- 社内SEへ移る
ここで大事なのは、年収だけで飛びつかないことです。
たとえば、スキルを伸ばしたいなら受託や自社開発が合いやすい一方、働き方の安定や事業会社理解を重視するなら社内SEが合うこともあります。
「SESが嫌だから何でもいい」で動くと、次のミスマッチが起きやすくなります。
求人票と面談で確認すべきチェックポイント
商流・単価・案件選択権の質問
求人票や面談では、次の3つを必ず確認してください。
- 商流の浅い案件はどれくらいあるか
- 単価や評価は給与にどう反映されるか
- 案件はどこまで本人希望を反映できるか
この3つに具体性がないなら、入社後も「何となく配属され、何となく評価される」可能性が高いです。
待機時の扱いと評価反映の確認
見落としやすいのが待機条件です。
表面の年収レンジがよくても、待機時の給与減額が大きいと、実際の生活は安定しません。
また、現場で高評価を取ったときに、昇給・次案件・役割拡大へどうつながるのかも確認しておくべきです。
ここは求人票だけでは見えにくいので、面談で「前職SESの方がどう年収改善したか」を具体例ベースで聞くのが有効です。
SES経験を転職市場でどう伝えるか
SES経験が不利なのではなく、伝え方が弱いケースは多いです。
職務経歴書では、客先名や技術名を並べるだけで終わらせず、次の順で整理すると評価されやすくなります。
- どんな課題の現場だったか
- 自分の役割は何だったか
- 何を改善・対応したか
- その結果どうなったか
- 次の職場でも再現できる強みは何か
同じ常駐経験でも、「運用をしていました」と書く人と、「障害傾向を分析して手順を見直し、問い合わせ初動を短縮した」と書く人では、見え方が大きく変わります。
まとめ|「中抜きされすぎ」と感じたら感情ではなく構造で判断する
SESで「中抜きされすぎ」と感じるとき、違和感の原因はかなりの確率であります。
公的機関も、多重下請構造、不必要な中抜き事業者、契約の不明確さ、偽装請負の問題を指摘しています。だから、不満を我慢し続ける必要はありません。
ただし、見るべきなのは感情ではなく構造です。
本当に確認したいのは、次の3点です。
- その差額に説明できる価値があるか
- 商流が深すぎないか
- 今の案件経験が次の年収アップにつながるか
この3つに納得できないなら、今の会社に残る理由はかなり弱いはずです。
まずは、行き先別の転職先比較と、SES経験をどう伝えるかの整理から始めるのがおすすめです。情報を増やすより、判断材料を増やす段階に入ったと考えてください。