【エンジニア向け】スタートアップのVPoEとは?CTOとの違いから、なるための5ステップまで徹底解説
「VPoEを目指したいけど、何から始めれば…?」そんな現役エンジニア必見。スタートアップにおけるVPoEの本当の役割、必要なスキル、そして目指すための具体的なアクションプランを解説。キャリアの解像度を上げましょう。
キャリアパス診断してみる「シニアエンジニアやテックリードとしてチームを牽引してきたけど、この先のキャリアはどうなるんだろう…?」
「VPoEという言葉を耳にするけど、CTOと何が違うのか、具体的に何をする人なのかよく分からない」
「マネジメントにも興味はあるけど、自分がなれるのか、何から手をつければいいのか…」
もしあなたが、エンジニアとして次のキャリアステージを模索しているなら、このような漠然とした不安や疑問を抱えているのではないでしょうか。
この記事は、まさにそんなあなたのために書きました。
この記事を読めば、スタートアップにおけるVPoEの役割が明確に理解できるだけでなく、現役エンジニアであるあなたがVPoEを目指すための具体的なロードマップを手に入れることができます。
単なる役職解説で終わらない、明日からのあなたの行動を変えるための実践的なガイドです。ぜひ最後まで読み進めて、キャリアの解像度を上げていきましょう。
そもそもVPoEとは?スタートアップにおける「エンジニア組織の経営者」
VPoE(Vice President of Engineering)とは、一言で言えば「エンジニア組織のパフォーマンスを最大化することに責任を持つ経営幹部」です。
スタートアップの文脈では、単なる「開発部長」ではありません。経営陣の一員として、事業戦略とエンジニアリングを接続し、「人・組織・文化・プロセス」の側面から、強い開発組織を創り上げる役割を担います。
VPoEの主な役割:「人」と「組織」の成長に責任を持つ
VPoEのミッションは、最高のエンジニアチームを構築し、そのチームが継続的に高いパフォーマンスを発揮できる環境を整えることです。具体的な職務は多岐にわたりますが、主に以下の領域に責任を持ちます。
- 採用: 事業計画に基づいた採用戦略の立案と実行、魅力的な候補者体験の設計
- 育成: エンジニアの成長支援、キャリアパスの設計、教育制度の導入
- 評価: 公平で納得感のある評価制度の設計と運用、フィードバック文化の醸成
- 組織設計: チームの構造、役割分担、コミュニケーションラインの最適化
- 目標設定と進捗管理: OKRやKPIなどの目標設定、プロジェクトの進捗管理、リソース配分
- エンジニアリング文化の醸成: 心理的安全性の高い、生産的なチーム文化の構築
VPoEは、コードを書くことよりも、組織というシステムを設計し、メンバーが最大限の能力を発揮できる「場」を作ることに情熱を注ぎます。
【最重要】CTOとの明確な違いとは?技術のトップ vs 組織のトップ
多くのエンジニアが混同しがちなのが、VPoEとCTO(Chief Technology Officer)の役割の違いです。スタートアップの初期フェーズでは一人が兼任することも多いですが、組織がスケールするにつれて、その役割は明確に分かれていきます。
「技術の未来」に責任を持つのがCTO、「エンジニア組織の今と未来」に責任を持つのがVPoEと考えると分かりやすいでしょう。
VPoE (Vice President of Engineering) のフォーカス
- How & Who(どうやって作るか、誰が作るか)
- 関心事: 開発プロセス、プロジェクト管理、生産性、採用、育成、評価、組織文化
- 時間軸: 中期(四半期〜1年)
- 問い: 「どうすれば、このメンバーで計画通りに質の高いプロダクトを届けられるか?」
CTO (Chief Technology Officer) のフォーカス
- What & Why(何を作るべきか、なぜその技術か)
- 関心事: 技術戦略、アーキテクチャ選定、R&D、技術的負債、イノベーション
- 時間軸: 長期(1年〜5年)
- 問い: 「3年後、我々の事業を支えるべき技術は何か?」
役割分担が一目でわかる比較表
観点 | VPoE | CTO |
ミッション | エンジニア組織のパフォーマンス最大化 | 事業成長をドライブする技術戦略の策定 |
責任範囲 | 人・組織・プロセス・文化 | 技術・アーキテクチャ・ビジョン |
主な業務 | 採用、育成、評価、1on1、目標管理 | 技術選定、R&D、セキュリティ、知財戦略 |
KPI例 | 採用充足率、離職率、リードタイム | システム可用性、開発生産性、将来の拡張性 |
思考 | マネジメント思考 | テクノロジー思考 |
なぜ、成長期のスタートアップにVPoEが必要不可欠なのか?
「なぜわざわざVPoEという役職が必要なの?」と思うかもしれません。その理由は、スタートアップ特有の成長痛にあります。
「30人の壁」を越え、スケールする組織を作るため
エンジニアが10人程度の頃は、CTOや創業者が見渡せる範囲で何とかなります。しかし、組織が30人を超えてくると、コミュニケーションは複雑化し、一人ひとりの顔と名前、キャリアの悩みまで把握するのは不可能になります。
俗に言う「30人の壁」です。この壁を乗り越え、50人、100人とスケールする組織を作るためには、再現性のある「仕組み」が必要です。VPoEは、この採用・育成・評価の仕組みを設計し、組織が大きくなっても崩壊しない土台を築く専門家なのです。
経営と開発現場の「翻訳者」として機能するため
スタートアップでは、経営陣が描く「事業戦略」と、開発現場の「技術的現実」の間に、しばしば溝が生まれます。
- 経営:「来月までにこの機能をリリースしたい!」
- 現場:「そんな無茶な…今のアーキテクチャだと無理です!」
VPoEは、この両者の間に立ち、経営の言葉をエンジニアが分かる言葉に、エンジニアの言葉を経営が分かる言葉に「翻訳」します。これにより、無用な対立を防ぎ、会社全体が同じ目標に向かって進むための潤滑油となるのです。
現役エンジニアがVPoEになるための6ステップ・ロードマップ
では、ここからが本題です。現役のエンジニアがVPoEというキャリアを掴むためには、どのようなステップを踏めば良いのでしょうか。具体的なロードマップを6つのステップでご紹介します。
Step 1:まずはテックリードとして圧倒的な成果を出す
VPoEはマネジメント職ですが、その土台にはエンジニアリングへの深い理解と、現場からの信頼が不可欠です。まずは現在の職務、特にテックリードとして、技術力とプロジェクト推進力の両方で圧倒的な成果を出し、周囲から「あの人に任せれば大丈夫」という信頼を勝ち取りましょう。これが全ての始まりです。
Step 2:思考を「コード」から「事業」と「組織」へ切り替える
次に必要なのは、意識の変革です。
- 「この機能はどう作るか」だけでなく、「なぜ作るのか」「事業にどう貢献するのか」を考える。
- 「自分がどう実装するか」だけでなく、「チームとしてどうすればもっと速く、質の高いアウトプットを出せるか」を考える。
自社のビジネスモデルやプロダクトのKPIを理解し、常に「事業貢献」と「組織最適」の視点から物事を捉える癖をつけましょう。
Step 3:採用活動にコミットし、「仲間集め」の当事者になる
VPoEの最重要ミッションの一つが採用です。できる限り早く、採用活動に当事者として関わりましょう。
- 採用広報: エンジニアブログの執筆やイベント登壇などで、自社の技術的魅力を発信する。
- 面接: 面接官として候補者のスキルやカルチャーフィットを見極める経験を積む。
- オファー面談: 候補者の心を動かし、入社を決断してもらうクロージングを経験する。
「自分が一緒に働きたい仲間を、自分たちの手で集める」という経験は、VPoEにとってかけがえのない財産になります。
Step 4:ピープルマネジメントを実践する(1on1、評価、育成)
上長に許可を取り、チームメンバーとの1on1や目標設定、評価フィードバックなどを担当させてもらいましょう。
- 1on1: メンバーのキャリアの悩みを聞き、成長を支援する。
- 目標設定: チームの目標と個人の目標を接続させ、モチベーションを高める。
- 評価フィードバック: 事実に基づいたフィードバックで、相手の成長を促す。
ここで重要なのは、「管理」するのではなく、「支援」するというスタンスです。人の成長に本気で向き合う経験が、あなたをVPoEへと近づけます。
Step 5:経営陣と対話し、PLや事業KPIを理解する
技術的な会話だけでなく、ビジネスサイドの会話にも積極的に参加しましょう。全社定例や経営会議の議事録を読み込み、PL(損益計算書)や事業KPIといった数字が、自分たちの開発とどう繋がっているのかを理解しようと努めてください。
分からない言葉があれば、臆せずビジネスサイドのメンバーや経営陣に質問しましょう。その姿勢が、あなたを「一エンジニア」から「経営幹部候補」へと引き上げてくれます。
Step 6:客観的な市場価値を把握し、キャリア戦略を具体化する
Step 1からStep 5までは、主に現職の環境で実践できるアクションでした。これらを通じて、あなたはVPoE候補としての素養を確実に高めることができます。
しかし、最後の仕上げとして非常に重要なのが、「社外の視点」を取り入れ、ご自身の市場価値を客観的に把握することです。
「自分のスキルセットは、市場でどれくらい評価されるのか?」
「VPoEを求めるスタートアップは、今どんな人材を探しているのか?」
「そもそも、現職でVPoEを目指すのが本当にベストな選択肢なのか?」
こうした問いに答えるためには、社内の視点だけでは不十分です。
そこで有効なのが、ハイクラスIT人材に特化した転職エージェントの活用です。彼らは日々多くのスタートアップ経営陣と対話し、VPoEに求められるリアルな要件を熟知しています。
彼らと壁打ち(キャリア相談)することで、非公開求人を含む具体的な選択肢を知れるだけでなく、あなたのキャリアプランが現実的かどうかの客観的なフィードバックを得ることができます。
今すぐ転職する気がなくても問題ありません。まずは情報収集として、プロの視点を取り入れることが、あなたのキャリア戦略をより強固なものにします。
どのエージェントに相談すれば良いか分からない方は、私たちが厳選した、転職エージェントを紹介しているこちらの記事をぜひ参考にしてください。
その中でも、長期的なキャリア設計を支援する@PRO人が特におすすめです。経営視点が求められるVPoEへの転職は、目先の条件だけでなく、5年後の自分を見据えることが重要。あなたの価値観や理想の組織像を丁寧に言語化し、最適なスタートアップとの出会いを実現してくれます。
あなたはVPoE向き?3つのセルフチェック
ここまで読んで、「自分はVPoEに向いているのだろうか?」と感じたかもしれません。最後に、3つのシンプルな問いを自分に投げかけてみてください。
1. 自分がコードを書くより、チームの成功に喜びを感じるか?
自分がヒーローになるのではなく、メンバーが活躍し、チーム全体が成果を出すことに、より大きな喜びややりがいを感じるか。
2. 人のキャリアや成長に本気で向き合えるか?
メンバーのキャリアプランについて一緒に悩み、時には厳しいフィードバックをすることも含めて、人の成長に深くコミットする覚悟があるか。
3. カオスな状況や、答えのない問いを楽しめるか?
技術のように明確な正解がない「組織」や「人」の問題に対して、粘り強く向き合い、試行錯誤すること自体を楽しめるか。
もし、これらの問いに「Yes」と答えられるなら、あなたにはVPoEとしての素養が十分にあります。
まとめ:VPoEへの道は、今日の小さな意識改革から始まる
本記事では、スタートアップにおけるVPoEの役割、CTOとの違い、そして現役エンジニアがVPoEになるための具体的なロードマップを解説しました。
- VPoEは「人」と「組織」で事業を伸ばすエンジニア組織の経営者
- CTOは「技術」で事業の未来を創る技術のトップ
- VPoEへの道は、技術的信頼をベースに、採用・マネジメント・事業理解の経験を積むこと
VPoEになるのは、決して簡単な道のりではありません。しかし、それはエンジニアとしてのキャリアの先に確実にある、非常にやりがいのある選択肢の一つです。
このロードマップを参考に、まずは明日からの1on1で、あるいは次のプロジェクトで、少しだけ意識を変えてみてください。その小さな一歩が、あなたのキャリアを大きく飛躍させるきっかけになるはずです。

応エン