【完全ガイド】テックリードの役割とは?PMとの違いから求められるスキルまで徹底解説
テックリードの役割とは?PMやEMとの違い、求められるスキル、キャリアパスまでを完全解説。技術力に自信のあるエンジニアが次のステップへ進むための具体的なアクションプランも紹介します。あなたのキャリアプランを明確にしましょう。
キャリアパス診断してみる「最近、上司からテックリードを打診されたけど、具体的に何をするのか分からない…」
「自分の技術力だけで、チームを引っ張っていくなんて務まるだろうか?」
「PMやエンジニアリングマネージャーとの違いも、正直よく分かっていない…」
実務経験を積み、チーム内での信頼も厚くなってきたあなただからこそ、今まさにこのようなキャリアの岐路に立ち、期待と不安を感じているのではないでしょうか。
ご安心ください。この記事は、そんなあなたのために書きました。
この記事を読めば、テックリードに求められる役割やスキルが明確に理解でき、明日から何をすべきか具体的な行動計画を立てられるようになります。
単なる役割の羅列ではなく、「なぜその役割がチームにとって重要なのか」という本質から解説するので、あなたのキャリアプランはより解像度の高いものになるはずです。
そもそもテックリードとは?なぜ今、求められるのか
テックリードは「技術でチームを導く羅針盤」
テックリードとは、一言で言えば「開発チームの技術的な成果に責任を持ち、チームを成功に導くリーダー」です。彼らは、単に優れたプログラマーであるだけでなく、チーム全体の技術力を引き上げ、プロダクトの品質を最高水準に保つための「羅針盤」のような存在です。
複雑化するシステム、増え続ける技術選択肢の中で、ビジネス要件を満たしつつ、将来の拡張性や保守性まで見据えた最適な技術的判断を下す。この重要な役割を担うのがテックリードなのです。
PM(プロジェクトマネージャー)やEM(エンジニアリングマネージャー)との違い
テックリードの役割を理解する上で、よく混同されがちなのがPMとEMです。それぞれの責任範囲を明確にすることで、テックリードの立ち位置がよりクリアになります。
役職 | 主な責任領域(Who is responsible for...) | 具体的な役割 |
テックリード (TL) | 技術的な意思決定 (How) | アーキテクチャ設計、技術選定、コード品質、技術的負債の管理、メンバーの技術育成 |
PM | プロダクトの仕様と要求 (What, Why) | 要求定義、仕様策定、スケジュール管理、ステークホルダーとの調整 |
EM | チームとメンバーの成長 (Who) | メンバーの評価・育成、1on1、採用、チームビルディング、組織課題の解決 |
簡単に言えば、PMが「何を作るか」を決め、テックリードが「どうやって作るか」の技術的な最適解を導き出し、EMが「誰が作るか(チームの健全な成長)」に責任を持つ、という関係性です。もちろん、これらの役割は組織によって重複することもありますが、この基本的な違いを理解しておくことが重要です。
テックリードの具体的な5つの役割と仕事内容
では、テックリードは具体的にどのような役割を担うのでしょうか。ここでは、特に重要な5つの役割を解説します。
1. 技術的な意思決定とアーキテクチャ設計
プロジェクトの根幹をなす技術選定(プログラミング言語、フレームワーク、DBなど)や、システムの全体像であるアーキテクチャ設計を行います。
- なぜ重要か?:ここの判断が、将来の開発速度、拡張性、保守性に直接影響します。短期的な視点だけでなく、中長期的なビジネスの成長を見据えた上で、最適な技術的判断を下すことが求められます。
2. コード品質の担保とレビュー文化の醸成
チームが書くコード全体の品質を高く保つ責任を負います。具体的には、コーディング規約の策定、プルリクエストの効果的なレビュー、自動テストの導入などを推進します。
- なぜ重要か?:品質の低いコードは、将来的に「技術的負債」となり、バグの温床や開発速度の低下を招きます。テックリードが率先して質の高いレビューを行うことで、チーム全体のコード品質が底上げされ、健全な開発文化が醸成されます。
3. チームメンバーの技術的育成とメンタリング
チームメンバー一人ひとりの技術的な成長をサポートします。ペアプログラミングやモブプログラミング、1on1での技術相談、勉強会の開催などを通じて、メンバーのスキルアップを支援します。
- なぜ重要か?:チームの成果は、個々のメンバーの能力の総和です。後輩があなたのレビューやアドバイスで成長し、チーム全体の開発力が向上した時、コーディングとはまた違った大きな喜びと達成感を感じるはずです。
4. 生産性の向上と技術的負債の管理
開発プロセスにおける非効率な部分を見つけ出し、CI/CD環境の整備や開発ツールの導入などによってチームの生産性を最大化します。また、意図的に、あるいは無意識に発生した「技術的負債」を計画的に返済していく計画を立て、実行します。
- なぜ重要か?:放置された技術的負債や非効率な開発プロセスは、確実にチームの士気と生産性を蝕んでいきます。これらを適切に管理し、チームが常に高いパフォーマンスを発揮できる環境を整えるのも、テックリードの重要な仕事です。
5. 他チームやステークホルダーとの技術的な橋渡し
PMやデザイナー、他部署のエンジニア、場合によっては経営層など、様々なステークホルダーと技術的な内容についてコミュニケーションを取ります。複雑な技術仕様を、相手に合わせて分かりやすく説明する能力が求められます。
- なぜ重要か?:技術的な制約や可能性をビジネスサイドに正しく伝えることで、非現実的な要求を防ぎ、より良いプロダクト開発に繋がります。テックリードは、技術とビジネスを繋ぐ重要な翻訳家なのです。
テックリードに求められるスキルセット【技術力だけでは不十分】
「役割は分かったけど、自分に務まるだろうか…」と感じているかもしれません。テックリードに必要なのは、技術力だけではありません。ここでは、求められるスキルを「ハードスキル」と「ソフトスキル」に分けて解説します。
前提となる高度な「ハードスキル(技術力)」
言うまでもなく、テックリードにはチームで最も頼られるレベルの高度な技術力が不可欠です。
- 担当領域における深い知識と経験
- スケーラビリティやパフォーマンスを考慮した設計能力
- 幅広い技術領域(フロントエンド、バックエンド、インフラなど)への理解
- デバッグ能力と問題解決能力
これらは、チームからの信頼を得て、的確な技術的判断を下すための土台となります。
差がつく重要な「ソフトスキル」5選
多くの優秀なエンジニアがテックリードへの道で壁にぶつかるのが、このソフトスキルです。技術力+ソフトスキル=最強のテックリード、この方程式をぜひ覚えておいてください。
- 技術的コミュニケーション能力
なぜこの技術を選ぶのか、その設計にはどんなメリット・デメリットがあるのかを、論理的かつ分かりやすく説明する能力です。相手の技術レベルに合わせて言葉を選ぶ配慮も求められます。 - 意思決定能力とリーダーシップ
不確実な状況でも、入手可能な情報から最善と信じる技術的判断を下し、その決定に責任を持つ力です。そして、チームをその決定した方向に導いていくリーダーシップが不可欠です。 - 育成・メンタリング能力
相手の課題を傾聴し、一方的に答えを教えるのではなく、本人が自ら答えにたどり着けるように導く力です。相手の成長を信じ、辛抱強くサポートする姿勢が求められます。 - ファシリテーション能力
技術的な議論が発散したり、意見が対立したりした際に、議論を整理し、チームとしての合意形成を促す能力です。全員が納得して前に進めるような場を作るスキルが重要になります。 - ビジネス視点
自分たちの作っているプロダクトが、どのようにビジネスに貢献するのかを理解する力です。完璧な技術を追求するだけでなく、事業の状況や納期を考慮した上で、現実的な最適解を見つけ出すバランス感覚が求められます。
テックリードを目指すあなたが明日からできること
テックリードは一朝一夕になれるものではありません。しかし、日々の業務の中で意識を変えるだけで、必要なスキルは着実に身につけていくことができます。ここでは、明日から実践できる4つのアクションプランをご紹介します。
1. 率先してコードレビューを行う
ただバグを指摘するだけでなく、「なぜこちらの実装の方が良いのか」「この設計にすると将来どんなメリットがあるのか」という"理由"を丁寧にコメントしましょう。あなたのレビューが、チームの学びの場になります。
2. チーム内の勉強会を主催する
自分が最近学んだ新しい技術や、プロジェクトで得た知見などを共有する場を設けてみましょう。人に教えることは、自分自身の理解を最も深める方法です。小さな規模からで構いません。
3. 小さな改善提案から始める
「このライブラリを導入すれば、開発効率が上がりそうです」「ここのテストコードをリファクタリングしませんか?」など、チームの生産性向上に繋がる小さな改善提案を積極的に行いましょう。課題発見能力と提案力が養われます。
4. 設計思想や技術選定の理由を言語化する癖をつける
自分が書いたコードや下した判断について、「なぜそうしたのか?」を常に言語化し、説明できるように準備しておきましょう。ドキュメントに残すのも良い訓練になります。この癖が、あなたのコミュニケーション能力を飛躍的に向上させます。
よくある質問(FAQ)
Q. テックリードの年収はどのくらいですか?
A. 企業の規模や業界、個人のスキルによって大きく異なりますが、一般的にはシニアエンジニアよりも高い水準に設定されることが多いです。大手企業や急成長中のスタートアップでは、年収800万円~1,500万円以上となるケースも珍しくありません。
Q. テックリードの先のキャリアパスは?
A. テックリードを経験した後のキャリアは多様です。技術をさらに突き詰めるプリンシパルエンジニアやCTO(最高技術責任者)を目指す道、チームマネジメントの比重を高めてEM(エンジニアリングマネージャー)になる道、あるいは独立して技術顧問として活躍する道など、様々な選択肢が広がります。
Q. プログラミングをする時間は減りますか?
A. はい、多くの場合はプレイングマネージャーとしてコーディングも行いますが、メンバーだった頃と比較すると、レビューや設計、ミーティング、メンタリングなどに費やす時間が増えるため、自身でコードを書く時間は減少する傾向にあります。この変化を受け入れ、チーム全体の成果を最大化することに喜びを見出せるかが重要になります。
まとめ:テックリードは技術とチームを繋ぐやりがいのある役割
この記事では、テックリードの役割から求められるスキル、そして目指すための具体的なアクションプランまでを解説しました。
最後に、重要なポイントを振り返りましょう。
- テックリードは、技術でチームを成功に導く羅針盤
- PMは「What」、テックリードは「How」、EMは「Who」に責任を持つ
- 主な役割は「技術的意思決定」「品質担保」「育成」「生産性向上」「橋渡し」の5つ
- 高度な技術力に加え、コミュニケーションや意思決定といったソフトスキルが極めて重要
- 日々のレビューや改善提案の積み重ねが、テックリードへの道に繋がる
テックリードは、単なる「すごいプログラマー」ではありません。あなたの持つ高い技術力を、自分一人のためだけでなく、チーム全体のために使うことで、より大きな成果を生み出す、非常にやりがいのあるポジションです。
この記事が、あなたのキャリアの次の一歩を力強く後押しできれば幸いです。

応エン